<新版>日本語の作文技術
朝日文庫
分かりやすい文章を書くための技術を教えてくれる本です
偶然タイムラインに流れてきたのを見て、まさに自分に必要な本だと思ったのですぐに購入して読んでみました
まず、筆者の技術論と思想とを分けて読むのが良いと思います
レビューなんかにも「内容には同意できるけど、思想には同意できない」といった意見が複数見られ、引用されている例文のチョイスや地の文から発せられる雰囲気でどのような思想なのかは分かるかと思います
肝心な技術論の部分については、全てに完全に同意できるわけではないですが全体的に参考になる部分が多く、技術の指南書として見れば良書だと思います
ただし、元の本(新版ではない方)が出版されたのが 1982 年であり、当然ながら引用文はそれより前に作られた文章(さらには筆者の思想による例文のチョイスもあったり)なので、古い文体に慣れていないと理解を妨げてしまうような気もしました
レビューでは「わかりにくい」という意見も見られましたが、おそらくは筆者の思想や文体が気になって本題が頭に入りにくくなってしまったのでは? と思います
そんな訳で「技術指南書としては良書だが、技術的な内容とその他の内容を分けて読む必要がある」という、「注意点を伝えたうえでなら良書として人に勧められる本」と言うのが私の正直な感想
以下、個人的に特にタメになったと思う内容について
修飾
2章分を使い具体的な例を示しながら、いくつかの原則を提示しています
一つの例文に対して、言葉を並び替えて文章としての分かり易さを比較したり、それらの言葉を修飾する言葉を足したり引いたりして同じ並びでも分かり易さが変化することを示したりと、理解しやすくとてもタメになると思います
ここで示される原則は、後の章で出てくるテンの打ち方や日本語における主語についての考え方などにも関係する、この本の中でも重要な原則であると思います
テンについて
マル(句点)とテン(読点)を合わせて「句読点のうちかた」として、これだけで 1 章分を使って説明がなされています
読点を「作文の原則として必要なテンと、筆者の自由に打つテン」とに分けて、原則として必要なテンについて説明している部分は非常にタメになります
私が文章を書くときに頭の中に浮かんできたワードをそのまま出力して「思考の切れ目で点を打つ」というクセが付いてしまった結果、テンを打ちすぎる文章を書くようにになっていました
これを何とかしたいとずっと思ってはいましたが、単純にテンを消しただけでは文章がおかしくなってしまうなど、実際に文章をどう直せばよいかが分からずに困っていてました
ちなみに、この書評を最初に書いてから推敲した結果、これで元の半分くらいのテンの量になっています
段落について
「段落はかなりのまとまった思想表現の単位である」
段落について 1 章分を使って説明がなされていますが、その章の第 1 段落にあるこの文だけでも大体は理解できるかと思います
今の私のスタイルは、基本的にマルを使っていません
改行がマルと同じような意味を持っていて、1 行アケによって別の段落であることを表現しています
あとは、段落の頭は字下げをしない
文字組に興味を持ち始めてから読んだ本の中に横書き向きのスタイルとして紹介されていて取り入れたのですが、どの本が直接の元ネタだったのかが思い出せない……
まあ、とにかく、作文技術の本で説明されている本来のマルと改行の役割の説明は、今の私のスタイルにも適用することができる部分が多いと感じました
読みやすさと、表記の統一と
漢字とカナについて書かれた章では、あえて「読みやすさのために表記を統一しない」方法が紹介されています
日本語で使われる文字の特性上、漢字ひらがなカタカナが適度に混在したほうが読みやすくなるという理由です
試しに、これは文章ではなく単語の羅列ではありますが「漢字ひらがなカタカナ」と「漢字平仮名片仮名」「かんじひらがなかたかな」「カンジヒラガナカタカナ」とを比べてみると納得できるかなと思います
文字組に興味を持った関係で校正の本を少し読んだりもしていますが、このようにあえて表記を統一しない方法を使う場合は意思疎通が大事だと思います
(職業としての校正さんに対してだけでなく、先生だったり先輩だったり上司だったりと、書いた文章を読んだもらい、修正の指示を出せる立場にいる人みんなに対して、意思疎通が大事)
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