書き出しの一文というのは、その文章の第一印象を決め得るものです。
故に、その無断使用を許容する訳にはいきませんでした。
私はこのブログにて RTA の用語集を公開しています。
その用語集の説明文が、とある同人雑誌に無断使用されました。
文章の一致を指摘した私のツイートにより、多くの方にご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
この記事を公開した時点ではすでに私と相手の方との間で和解が成立しています。
詳細は相手の方が公開している note をご参照ください。
この記事では、私の視点から経緯を振り返った内容をまとめました。
発覚までの経緯
Twitter のタイムラインに RTA を特集した同人誌の告知ツイートが流れてきたのを見て、その本のことを知りました。
告知ツイートにはもくじが掲載されており、「用語集」の文字が目に留まりました。
私自身がこのブログで用語集を公開しているため、他の方が作成した用語集にはどのような語句が収録されるのか、その語句にはどのような説明文が付いているのか、興味がわきました。
通販にて入手できることを知り、注文。
自身の用語集で書いた文章を一言一句覚えている訳ではないため、読み始めた時点では部分的に語句のチョイスが似ているなと思ったことと、所々で私の記憶にあるフレーズが出てくるなと思った程度でした。
私の用語集を含め、既存の用語集などを参考資料としたのだろう、程度に思っていました。
最後の4つくらいの語句の並びと説明文を見て、それまでよりも強い既視感を覚えました。
自身の用語集と見比べてみて、語句によっては一言一句同じ文章が用いられているものもあると気付きました。
発覚後の行動
本全体の内容から見るとおまけコーナーともいえる部分ではありますが、その部分だけで見ると引用の要件を満たさないと判断しました。
(引用部分との区分が不明瞭、引用部分が主となり得る、出典の記載なし)
また、私の Autosplitter 用スクリプトファイル配布ページに「製作者を騙ったり、私が無料で公開しているものを有償利用しないでね」といった注意書きをしており、文章とスクリプトファイルという違いはあるものの、これをスクリプトファイル以外にも適用して考えると、この注意書きに抵触していると判断しました。
(そもそも、ブログのプライバシーポリシーのページにて文章・画像の無断での転載を禁止する文言があります)
この2つの判断から、無断使用を問題と捉えて解決に動くことを決意しました。
創刊1号目、記念すべき第1号に対して泥を塗るようなものだし、しかもその中のおまけコーナー的な部分のみが問題ということもあり、決意はしたものの、行動開始するのは気が重かった。
が、このままでは誰のためにもならないし、将来的には私が不利益(例えば、私が逆に無断使用の疑いをかけられるとか)を被る可能性があると考えると、やはり動くしかないと覚悟を決めました。
無断使用を疑っている部分のスクリーンショットをツイートしましたが、名誉棄損にならないように客観的事実の提示に留めるように注意していました。
著作物の無断使用に対する警告文をネットで検索して、それを参考にして相手の方に投げかける文面を考えました。
おおごとにするつもりはないと伝えたうえで、文章の無断使用について事実関係の確認を Twitter の DM にて依頼。
その際、ツイートしたものと同じ、自分の用語集のスクリーンショット画像を添付しました。
(仮にふざけた対応をされた時は、相応の対応で返すことまで覚悟していました。そうはならなかったので良かった)
夜になってからの連絡でしたが、その日の内に次のような内容で返信がありました。
- 文章の酷似を認めたこと
- 事実関係の調査を行うこと
- 調査のために時間が欲しいこと
- 調査結果の報告を必ず行うこと
文章の酷似があることは認めていただいたものの、無断使用を認めた具体的な範囲はまだ示していただいていなかったため、この段階ではまだ最悪の事態も想定していました。
つまり、場合によっては専門家に意見を伺うことも考えていました。
また、失礼ながらも問題が発覚してから「私以外にも無断使用の元の文章があるんじゃないか」という気持ちがありました。
私が把握している他の方の用語集を開いて一致する文章がないかを確認したりもしましたが、私が確認した範囲では無断使用とみられる他の方の文章は発見できませんでした。
報告書
数日後、DM にて調査結果の報告と著作権侵害についてのお詫びをいただきました。
オンライン通話ツールを使って説明とお詫びを行いたいとの申し出もいただきました。
報告書の内容は、主に
- 著作権侵害に対するお詫び
- 経緯の説明
- 著作権侵害のあった文章
- 今後の対応
- 再発防止策
報告書を見て、文章の無断使用をされたのは私だけではなかったと知りました。
申し訳ないが、やはり、という気持ちを抱きました。
私が確認しなかった場所からの無断使用でした。
そちらについては私は著作権者ではないため、ここでは詳しくは触れません。
報告内容の一部に不明瞭な部分があったため、DM の返信にて追加の説明を依頼。
追加分の説明の準備が整ってから、オンライン通話ツールを使っての説明をしていただくことにしました。
正直なところ、報告の内容にあまりに納得がいかなかった場合、および、報告をいただくまでにあまりに時間がかかった場合は専門家のお世話になる段取りを整えるつもりでいました。
幸い、調査報告書の内容にはおおむね同意・納得したため、この段階で専門家のお世話になる必要はなさそうだと判断しました。
翌日に DM にて追加の説明をいただき、私の疑問は一通り解消しました。
想定していた内容に近い内容で今後の対応を提示していただきましたが、そこまでする必要は無いと考えていたため私の意向を伝えました。
ただし、無断使用されたのは私だけではないため、最終的にどのような対応を行うかは相手の方の判断を尊重することにしました。
無断使用のあった項目
相手の方から許可を得たうえで、noteより引用
「チャート」
「ステージクリアの順番やアイテム取得のタイミングなどの攻略手順や戦略。また、それらを書き記したテキスト。」という箇所は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rta_21.html#chart「ガバ」
「ゲームプログラムの作り込みが甘いことを揶揄することば。壁抜けができる時「壁がガバガバ」、AIの知能レベルが低い場合「ガバAI」など。」という箇所は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rta_57.html#gaba「計測区間」
「タイマースタートとタイマーストップを行うタイミングについてのルール。スタート(ゲーム機の電源投入時、タイトル画面でスタート選択時、ステージ1の操作開始時)〜(ラスボス撃破の瞬間、最終ステージクリアの結果画面が表示された瞬間、the end表示の瞬間)など」という説明は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rta_21.html#section「レギュレーション」
「競技としての公平性を確保するために、タイマーをスタート・ストップするタイミングや、プレイ中の禁止事項などを定めたルールのこと。計測区間、使ってはいけない手法などを指定する。」という説明は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rta_21.html#regulation「Games Done Quick」
「アメリカで二〇一〇年一月から開催されている、世界最大規模の Speedrun を通したチャリティーイベント。今では約一週間に渡りホテルを貸しきって行われるようになっている。今では年に二回+α開催されていて、開催時期により寄付先がほぼ決まっている」という説明は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rtaspeedruntwitch_11.html#GDQ「Europian Speedrun Assembly」
「二〇一二年八月から開催されている、ヨーロッパ最大規模のSpeedrunを通したチャリティーイベント。二〇一七年までは年に一回の開催だったが、二〇一八年二月から年に二回開催されている」という説明は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rtaspeedruntwitch_11.html#ESA「RPG Limit Break (RPGLB)」
「アメリカで開催されている、RPGに関連するゲームタイトルに特化したSpeedrun を通したチャリティーイベント」という説明は以下を元に記載。
https://soushinsoujin989.blogspot.com/2019/08/rtaspeedruntwitch_11.html#RPGLB
私が主張した項目と差異がありますが、無断使用があった範囲はこの7項目(+他の方から1項目)で同意しております。
事実関係を記した文章であること、類似している箇所が項目全体に及んでいないことから無断使用には当たらないと判断、というのが相手の方からの解答でした。
私としても、偶然の一致としてあり得る範囲だと判断しました。
今後の対応
相手の方から許可を得たうえで、直接やり取りした DM などから引用
noteにて経緯の報告およびお詫び文の掲載
Twitter・Facebookページにて上記のnoteをリンクする形でお詫びを掲載
今後の在庫分に関しては経緯を記した紙を雑誌に挟んで販売する
増刷をする場合、もしくは記事を他の媒体で流用する場合は引用元を明記し、事後に許諾を得た旨を明記する
理想を言えば「全回収を行い、無断使用を行った文章を差し替えたものに交換」することを要求して、無断使用が無かった状態にしてもらうことも考えていました。
が、おまけコーナーともいえる部分での問題に対してそこまで求めるのは過剰な要求だとも考えていました。
理想とは別に、現実的な要求内容や妥協できるラインも考えていました。
先に相手の方に対応案を提示していただき、十分な内容だと思ったので、それに対して私の意向を伝えるに留めました。
行動を起こした本当の理由
行動を開始した理由の一つに「無料で公開している~」と書きましたが、その時点では言語化できていない感情がありました。
後になって思い返してみれば、その感情こそ、行動を開始した理由として大きかったように思います。
この記事の冒頭に書いた、書き出しについての私の考えが関係しています。
用語集であるから「端的にその語句を説明する一文」を意識して文章を考えていましたが、それだけでなく、その一文がその語句の第一印象となり得ることも意識していました。(それが実現できているかはまた別の話)
当然ながら、語句の数だけ書き出しの一文を考えた訳です。
その苦労を私以上に理解しているであろう、文字がメインの媒体で活動する方が、他人のその苦労を軽く見たと見なされ得る行いをしたことに腹が立った。
それこそが、行動を起こした本当の理由です。
最後に
著作権侵害は親告罪であり、告発は著作権者が判断することです。
この件はすでに当事者間で解決した話であり、部外者が口を出すものではありません。
この件を理由にして相手の方を非難する行為を、私は許容しません。
そのような行為こそ私の権利を奪う行為であると見なします。
また、主となる文章に対して付録的な文章に対する評価でもって本全体を評価する行為は、望ましくない行為であると考えています。
ぜひとも、本に対する評価は主となる文章への正当な評価によって行って欲しいです。
最後に、
相手の方が今回の失敗を今後に生かし、健全な方向へ、大きく発展することを願います。
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